タップの整形はキューのメンテナンスでは必修であり、一番頻度が高いと思います。
使っている刃物といえば、サンドペーパー・やすり・整形ツールなどで十分でしょう。

しかし、ここに落とし穴があります。

 タップの種類(プレー用)は、一枚革・2枚革・多層積層革・ファイバー系の4種類に分かれると思います。
その中でも、多層積層革の使用率がダントツに高いのではないでしょうか。しかし、タップ曲面整形においては一番神経を使わなければならない種類なのです。
多層積層であるため、一枚一枚の革の厚みは非常に薄い。接着されているから強度が出ているのであり、一枚の強度は非常に低いのです。


 上記のことを踏まえ、多層積層のタップ整形(仕上げ整形ではなく基本整形)についてお話します。

 シャフトを固定し、刃物(やすりなど)を横方向(シャフトに対して直角方向)へ切削整形しておられる方、非常に多く見受けられます。中には火をおこすようにして整形している方もおられます。
簡単に均一な曲面に出来るためでしょう。
この方法は積層に対して平行方向に力が加わるために横から革が引っ張られるようにむしりとられ、一枚一枚の革の断面を荒らします。刃物(やすりなど)の面が粗いほど、積層断面だけではなく見えない内部までにダメージを与えてしまうこともあるのです。

 全ての積層タップがこのようになるとは限らないと思いますが、積層という構造上、自然な現象なのです。

 ではどのようにして削るのがベストなのでしょうか。

 シャフトを廻すような、又は横方向へ削る方法での整形は細かい目の刃物での仕上げ整形程度にとどめ、基本整形では『頂上から廻りへ』の方向にて削るのがベストです。
この方法は積層に対して直角方向になります。刃物によって引っ張られる革はすぐに接着面で止まるため、むしり取られる現象を低く抑えられるのです。
ただし均一な曲面整形は難しく、練習を要します。

 次に一枚革やファイバー系ではどうでしょうか。
これらは全ての方向において均質(革であるため正確には均質ではないが、便宜上)であるため、どの方向から削ってもよい。ただし、下から上方向だけはNGです。


 ちなみに私は、最終仕上げ整形ぎりぎりまでの整形を全てカッターで行っております。カッターの刃は薄いために革に与える抵抗が低く、ほとんど革を傷めず整形できるからです。※当然整形難易度は高い
次にざっと荒仕上げ(頂上から廻り方向へ)を行い、仕上げ整形をします。



 タップの手入れを丁寧にするだけでも、キュー切れ・タッチ、及びタップの使用期間が延びるかもしれませんよ。