先角の取付加工(ネジ切り)について、常々思っていることがありました。

◆ハイテクシャフトの先角◆
ハイテクシャフトの先角は軽量化などから薄い傾向にあり、先角のネジ切を省略(強度上、ネジ切り出来ない)して接着されているものがほとんどだと思います。
今は大変高性能な接着剤が多いですから。
それとは別に、ノーマルシャフトはネジ切り加工にて先角を取り付けられているものが多いです。


◆ノーマルシャフト(ネジ切り仕様)の先角◆
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一般的な5/16-18の加工で、たいていはこれじゃないでしょうか。
私も今までこの方法にて取り付けてきました。
先角交換をよく依頼されますが、根本さえしっかりしていればこの方法でいいと思います。たまにネジ山がほとんど欠けてしまっているのも見受けますが・・・

たまに、このようなネジ切りを見かけます。違和感なく見えますが・・・
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これ、5/16-18の一般的なネジ切りなのですが、木ネジの根本部分を溝切り(細く)してあります。
金属加工のネジ切りにおいてはこのような加工(丁寧な仕事)をよくしますが、ネジ切り部の付け根部分は、”先角部位においての曲げモーメント”が最大になる部分です。
※シャフト全体で見れば最大曲げモーメントはブリッジ部分になると思いますが、ここでは先角の強度の観点でのみ検討しています。
尚、図面が間違っていましたらご指摘ください。

シャフト曲げモーメント図

先角曲げモーメント図
先角とシャフトの断面部分は面で接着されるので簡単に折れる事は無いと思いますが、この接合方法だとその溝の部分は構造上、接着剤が充填されているだけです。先角でもシャフトの木でもなく、接着剤の塊です。もし先角の根本とシャフトとの突き合わせ面が浮いた場合、木芯の根本部分で横からの力を受けていることになります。
※先角とシャフトの間が黒い汚れが入ってきている場合、その部分は浮いている可能性があります。
更に厳密に言いますと、先角への横への力が加わった場合(イングリッシュで撞いた場合)、先角の付け根には曲げ以外に引張の力も加わります。浮いている場合、撞くたびにこれを繰り返します。


◆検討中の先角◆
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この写真、見てわかるでしょうか、台形ねじ切りです。また、木芯も太くなっています。
色々検討の上、最近始めてみました。
材料が木であるネジは、ネジ山の先端はほとんど力を受けられません。木なので簡単に欠けて取れます。また、そのネジ山が入るための先角素材も深くネジ切る必要があり、当然それだけ断面欠損が出ます。先角材の強度が確実に落ちます。木のネジ山は、根本以外はほとんど意味を成さないと考えます。
この台形ネジ切りは深さ0.35mmです。欠けて取れるような先端は必要無いと判断しました。
結果、木芯が太くなったにも関わらず先角のネジ廻り部の厚さが変わらず、強度を保てるようになると考えています。
実際、接着せずに先角を装着し撞いてみましたが、問題なさそうです。
※先角を木ネジに締める時、キュッキュ言うくらいの密着度で加工してますので、接着剤無しでも一時的には大丈夫です。


次の写真は、『5/16-18ネジ』と『台形ネジ』の断面です。
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先角構造

密着性の確認を兼ねて作ってみました。下の断面は黒く塗ってわかりやすくしています。
断面で見るとわかりますが、やはり5/16-18ネジは、断面欠損が大きいですね、これは無駄です。断面欠損を少なくするよう、ネジ山を尖らせない5/16-18のネジ切りも見かけますが、多分同じことを考慮の上ではないでしょうか。
先角材だけのことを考えれば、台形ネジ切りは先角側溝(シャフト側山)のみでも良いかもしれません。密着性は更に高まります。今後の検討事項です。


木芯と先角、両方共、台形ねじ切り用刃物でそれぞれ切削加工しますので、非常に精度と手間がかかりますが、
木芯が太くなる=木軸の強度が上がる&先角部位が軽くなる=トビも減る
といいことづくめではないかと。
今後、新規ノーマルシャフトの先角は、この方法でやっていく予定です。
※この台形ネジ切りでの先角交換は、既存シャフトの木芯が細いでしょうから木芯を新規に入れなければなりません。
いつもやっている作業ですが、一手間増えます。

加工道具ですが、ネジ切りにてタップ、ダイスは使いません。
左が一般ネジ用、右が台形ネジ用の超硬スレッドミルです。いつも刃物を作ってもらっているところで特注しています。良い刃物を作ってくれます。
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◆接着剤について◆
以前は2液エポキシ接着剤を当たり前のように使っていましたが、今は全く使わなくなりました。
エポキシの硬さはカッチカチ(一部弾性もあるが)なので、どうしても木の”ヤセ”や”動き”についていけないように思います。
結局、先角交換を依頼された古い先角と木軸は、もうひっついてない事が多いです。※パリパリと接着剤が割れて落ちます
先角が象牙などの硬い材質であればまだわかりますが、樹脂(JUMAなど)と木を接着させるのに、カッチカチの接着剤は有りえません。動く木についていけず、はがれて当然だと思っています。
※ジョイントピンなどは先角に比べて動きが少ないので、金属と木の接合であってもアルミ粉含有等のエポキシがいいかと思います。

※硬い材料と柔らかい材料の『動く(振動)部位での接着』は難しいです。
短時間硬化の2液エポキシだと、加工が早くて楽なんですがね。
接着剤は奥が深いです。まだまだ勉強中です。


私の考えが独走している部分もあるかもしれません。
ここは違うんじゃない?とか、こうしたら良いよ!など、ご指摘ありましたら、よろしくお願い致します。