IMG_20161210_170558


バールウッド(瘤材)などの、材料として不均質であったり脆い材料を直接旋盤で削りますと、部分欠けが生じたりむしれたりします。
また、内部の空洞や割れ部分が現れたりもします。
強度や仕上りに大きく関わってきますので、加工の前にこの空洞部分を樹脂で硬めてしまいます。
樹脂で固めると言っても、樹脂に浸しておくだけでは内部までは浸透しませんので、真空にて材芯部まで含浸させます。

※加工中の欠損補修において、サイズにもよりますが後で端材や削りカスなどを接着剤で埋めたりしている方もおられますが、なかなか綺麗に仕上りません。
2~3mm以下の巣穴、大きい導管などの『自然な』穴は埋めて補修しますが、『加工中における欠損』については『欠損材料を補修して仕上げた商品』を提供する事に抵抗がありますので、新しい材料に交換します。



プロセスとしましては、


1.限界まで含水率を下げる

  ・自然乾燥では乾燥に限界があります。又、温熱乾燥は割れ・曲がりを生じやすいので工芸加工においては不適切です。


  ・高周波乾燥と真空乾燥の併用です。私は電子レンジ+真空乾燥を利用しております。高周波乾燥は木材内部から乾燥を促進しますので、曲がり・割れが発生しにくいです。真空乾燥は水の沸点が下がりますので、常温下でも乾燥を促進させます。


  ・含水率が高いほど、真空含浸過程においていつまでも泡が出続け内部まで含浸しません。また焼硬化過程にてブリードアウト(硬化する前に樹脂が内部から水蒸気と共に噴き出る)が発生しやすくなります。
IMG_20161206_093819
IMG_20161206_093809


2.真空装置にて樹脂を含浸させる

  ・細い、又は薄い材料であれば3時間程度でも浸透します(材種にもよります) が、私はまとめて処理しますので2~3日はかかります。
  ※材料を低温にしてからだと含浸の効果が高いのですが、一番含浸に時間がかかる材芯部分では常温に戻るほど既に時間が経過しておりますので、低温化は行っておりません。しかしペンブランク程度の材料であれば効果はあるかと思います。

IMG_20161206_100638
IMG_20161207_104829


3.含浸した材料をオーブンにて焼硬化させる

  ・この過程で曲がりが発生する場合があります。特にペンプランク程度のサイズだと起こりやすいです。

  ・温度管理が重要なので(オーブンの表示温度はあてにならない)、この間はつきっきりになります。ブリードアウトさせたら失敗です。


たった一本の材料にも色々手間がかかるのです。