一年少々前の出来事です。

 旋盤のチャック(咥える部分)を交換していました。
かなり重い(数キロはあります)ためしっかり保持して交換するのですが、うっかり落としてしまいました。精密な物なので心配しながら左手で拾い上げたら、また落とした。
普段から工具を落とすなどまず無かったために驚いたのですが、その事以上に同様したのが、「右手は動くが左手が動かない」。
手で掴む事は出来るのですが、必要とされる力で掴めないから落としてしまう。
『掴むために必要な力』は脳から神経を通じて手に司令が伝わると思うのですが、どうやらその司令が手に反映されいないらしい。

かなり焦りました。症状は左手だけのようです。

後日、かかり付けの医者に行ったのですが原因がはっきりわからないためしばらく様子を見ることに。


普通、人は物を掴むとき、その重量を無意識で判断出来ているために必要とした力を意識しなくてもいい。たとえばコップを持とうと思った時、コップを持つために必要な握力は意識しなくとも自然に脳から必要とされた力が手に伝わり持つ事が出来る。
しかしそれが麻痺しているため必要とされる力以上にワシ掴みしないと落としてしまう。※ワシ掴みしても落とす時は落しますが。


 非常に不便です。
 買い物時の支払いの際、財布の中の小銭は指を使って100円玉や10円玉を寄り分けて取り出していると思うのですが、そういう器用な指の動きが出来ない。といいますか、そもそも小銭を掴めない。まるでアル中の様です。
なんとかお金を支払うと、今度は皿に出された「おつりの小銭」を掴めない。
パソコンで文章を書く時も、左手の指がまともに動かないためキータイミングが右と左が全く違い、ものすごく遅くなってしまう。以前は人が話すくらいの速さで打てたのが今は片手でタイピングしたほうがいいと思えるくらいの速さです。

 当然仕事にも大きく影響します。
左手にキーパッドを使って図面を書いているため、作成スピードが激遅になりました。


 とにかく仕事・生活全てにおいて不便極まりないため、総合病院にて精密検査を受けることに。
MRI、CT、その他いろいろ検査した結果。

医者:「握力は左右同じです。ただ左手を動かすための脳からの司令が手に反映されていない。」
私:「ようするに何の病気ですか?治療できますか?」
医者:「予想していた首からの神経、脳神経、その他全て正常です。はっきりした病名は神経細胞を取り出して検査しなければなりません。現状考えられる病気としては、世界的にも非常に珍しい病気なのですが・・・。治療は現在は出来ません。出来ない事は無いのですがリスクのほうが大きく、治療して更に悪化する場合もあります。現状握力はあるため、治療しないほうがいい。症状自体は専門用語でジストニアス。」

 結果、様子見ということで帰宅することに。
非常に珍しい、物を落とすような神経系の病気って、ひょっとしてあれですか・・・

 日によって症状がばらつきます。気にならないくらいに普通に動く日もあれば、右手で左手をひっぱたくような日もある。
ビリヤードにおいてはブリッジを作る手。どのような影響があるかといいますと、いきなり力が抜けたり、抜けっぱなしだったりするため、キューを通す指はフラフラ状態、ラシャに接する指はふんばりが効かなく指が自然に閉じていく。安心してキューが振れません。そんな事もあり、現在はほとんどビリヤードはプレーしていません。

 仕事においても非常に影響しているため急ぎの仕事はほとんど断るはめに。
工芸も、右手は動くといっても支える左手も重要。


 ただ、心配ばかりしていても治療は出来ないとわかったわけだし、左手が使えなくなるころには他にも影響が出ているだろうし 、自然には治らないだろうし。


 しかしいつも動かないわけではない(平均では動く日のほうが多い)から、左手がどうにもならなくなるまでは創作活動を続けていこうと思いつつ、今は手が動く日にゆっくり作品を作っています。