近年におけるキュータップは大変種類が豊富になってきました。
20年ほど前では使えるタップは限られておりましたが、今は様々な工夫により性能と安定性を両立した物が多く、ユーザーにとっては選択に困るほど有難い悩みです。


 傾向としては積層構造がほとんどですが、今までに経験したことがないタップに最近出会いました。

 持ち込みでタップ交換を頼まれ引き受けたのですが、GLUE(接着面)に触った途端、指先が真っ黒になったのです。乾いた粉ではなく中から液体のように染み出してくる(油のようなもの)ため、しっかり拭き上げたあと瞬間接着剤にて表面を固めて取り付けを行ったのですが、乾燥後刃を当てた途端、ポロリ・・・
接着面にさわるとやはり黒い物が指先につきます。中から油のようなものが染みだしてくるような状態です。
改めて接着剤を染み込ませて接着面を作りなおしたのですが、やはり接着はできませんでした。革製品のためアセトン等で油抜きも出来ません。
このタップ、かなり有名なプロがプロデュースしている商品です。

 次に別依頼で有名どころのタップを取り付けたのですが、後日「浮いているような状態」と改めて持ち込まれました。
「今まで取り付けたタップが取れたり浮いたことがない」というのが私の自慢の一つなので、そんなはずはと思いタップを取り外そうとしたところ、タップの中間部分から『もげ落ちた』のです。積層剥がれとは違い、ブルータップでいう『はずれ提灯タップ』に似た状況でした。積層タップでは初めての経験です。これが2個連続(同じ商品)だったため、その作成ロットが失敗作だったのかもしれません。(かなり一般的に出回っている評判の良いタップです)

 積層面ではがれるというのは過去に何度も経験しておりますが、『接着できないタップ』『提灯積層タップ』は初めてです。


 タップ作成は技術的にも完成されているとは思いますが、品質の安定性においては未だに難しいのかもしれません。最近のタップは価格が高いため消耗品として考えるにも痛い出費になるため、積層タップでの『ハズレ』は無くなってほしいものです。